2011年 03月 21日
でもそれは感覚が同じではないだけのこと 子供たちを「煩い」と感じたひとを責めるつもりはない もしわたしが子供たちに「いいぞもっとやれ」と言ったとしたら その人は「あいつとは一緒になにかをすることはできない」と思うはず 話はすこし前に戻る 寒かった 避難所はとても寒かった 避難所であるその中学校にたどり着いたとき てっきりわたしは体育館に通されるのだろうとおもっていたのだが 体育館だけでは間に合わないほどの避難者の数 体育館はすでにぎゅうぎゅうにひしめきあっていた ひろいひろい体育館にひとつだけ石油ストーブがあった その体育館を通り抜け、わたしが案内されたのは3階にある教室だった すでに他の教室はいっぱいになっていたうえ 通されたその教室にも30人ほどの人が横になっていたり 足をかかえていたりして過ごしていた 他の避難者は、避難するために防寒具や簡単な寝具を持ってそこにきていた わたしはその中で、ラジオをもっている男のひとに 「そばで聞かせていただいてもいいですか」と聞き そこに座った 言い忘れていたが そのときわたしは一人ではなかった ひとまわり以上年下の後輩と一緒にそこにたどり着いたのだ 彼女は私以上に薄着だった わたしは彼女と自分のために教室を出て 段ボールでも新聞紙でもわけてもらえないものかと ボランティアの係員に掛け合いに行った しかし段ボールはなかった いや、少しはあった しかし、高齢者や小さい子供のためにとっておきたいと言う フーコのことを思う 実はフーコのことはわたしの父母がきっちり守っていてくれると信じて あまり考えないようにしていた だけど「小さな子供」という言葉をきいただけで また、どうしようもなく不安感を盛り上げてくれる なにもない、なにもない なにごともなく、もう、今頃はあの寝息を立てて 父母がそれを見て微笑んでいるはずだ ブン、とかき消す 教室へ戻ってまた体を縮めて凌いでいると ボランティアのスタッフがブランケットがある・・と伝えにきた わたしはそれを受け取った これで少し楽になると思ったのもつかの間 新品のそれをビニール袋から出してみると ハンカチくらいの大きさしかないものだった わたしはそのビニール袋に両足を入れ、ハンカチくらいの大きさの”ブランケット”を 足首に巻いた そばで毛布にくるまっていた女性がカイロを私たちにくれた わたしは遠慮なくそれを受け取った 少し眠りましょう、横になりなさいと、後輩の女の子に言って自分も横になった しかし眠れるわけはない タイルの床から体に染みてくる寒さ フーコと父母のこと 夫とピピンのこと 道の途中ではぐれてしまった上司のこと ラジオから聞こえてくる津波のこと なにをとっても眠れるものではない むくり、と後輩が起き上がった 「どうしたの?」 「心配で・・・」 彼女は家族と既に連絡がついていた そのときに、祖母の家が流されたということをきいたと話していた そのことかと 「おばあちゃんのことは心配だけど、ご家族もいるのだからきっと大丈夫だよ」 と知ったようなことを言った すると 「おばあちゃんは多分大丈夫なんです。心配なのはつき合っているひとのことなんです」 すこし前に彼はいないと聞いていたので いつのまに彼ができたの、と、こんなときなのになぜか嬉々としてしまう 「彼の家、荒浜なんです・・・」 そのころ荒浜で200〜300人もの人の遺体が見つかったと ラジオから聞こえていた わたしは不器用なたちだ だれかに悲しい事や心配事が起こったときに 美しい言葉や優しい言葉をかけるということができないのだ そのときも、わたしの口からどんな言葉を発したんだったか とてもくだらないことを言ったか もしくは、なにも言わなかったのかどちらかだろう そして、できることならなにも言わなかったほうであってほしいと今思う 幸い、ほどなくして彼からは連絡があった そのあと、わたしにも夫からの例のメールがあったので わたしたちは少しはほっとして横になったのだった
by spatspipin
| 2011-03-21 21:31
| こと
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